シロクマの粘土板

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今更『マジェスティック・プリンス』について

 
 『マジェスティック・プリンス』は、メカもの好き・宇宙バトル好き・人型戦闘マシン好きにはたまらないギミックや演出が盛りだくさんだった。盛り上げるところ、盛り下げるところ、そういう緩急の付け方も美味かった。先行作品をオマージュにしたとおぼしき演出も盛りだくさんで、あれやこれやの作品を連想した。そのなかにはグラディウス(というより沙羅曼蛇)も含まれていて、ああ、凝ってるねぇと感心したものだ。
 
 登場キャラクターも、へっぽこのようで終わってみればバランスが取れていた。パイロットが二人しか死ななかったのもいい。死すべくして死んだ先輩、理不尽に死んだ先輩、たまたま生き残り、たまたま生き残ったから役目を果たし続ける先輩。このあたりの生死の采配も、ベタベタともサバサバともし過ぎず、いい塩梅だったと思う。最初は、「メカにカネかけてるぶん、人間には全然カネかかってないアニメじゃないか」とかぶーぶー言っていたが、『ひぐらしのなく頃に』原作の絵に四日親しめば慣れるのと同様、マジェスティック・プリンスにもすぐ慣れた。
 
 ここまでを踏まえて、ちょっと考える。なぜ『マジェスティック・プリンス』は人気が出なかったのだろう?
 
 人型戦闘マシンの戦いは、あまり求められていないせいだろうか?
 やはりキャラクターの絵がヘッポコすぎるから?
 人間模様の面では深みが足りないから?
 「もっとキャラが劇的に死ななければならない?」
 
 ひとつひとつ挙げてみても、よくわからない。ただ、逆に「ああ、人気集まるわー」みたいなものが無かったのも事実で、『はたらく魔王さま』あたりに勝てないというのは肌でなんとなく感じられるところではあった。そういえば、女の子のかわいらしさとか、ストーリーの起伏の鋭さみたいなものは、確かに無かった。どっちも今日日のアニメでは大切な要素の筈だけど、本作の女の子は二次創作映えしそうな感じが乏しく*1、ストーリーはアルプスの峰峰のような鋭さではなく、中国山地のようになだらかだった。美味かったけれども圧倒はされなかった、的な。だから売れなかったんだろうか。
 
 メカバトルは観ていて惚れ惚れするようなシーン多く、眼福だった。……が、思い出に残るレベルで喜怒哀楽を喚起せしめる場面は…乏しかったかもしれない。だからBDを買いたいですかと言われると、迷いの残る作品ではある。どうしたものかねぇ、これ。
 

*1:『ひぐらし』の面々のほうがまだしも恵まれていた。やおいは……狙っているっぽかったけれど、どうなんですか??

シロクマ(熊代亨)の著書