シロクマの粘土板

本拠地は「シロクマの屑籠」です。こちらは現時点では別館扱いです。

私、「ネットの書き言葉」に取り憑かれておりまして

 
悪口を言うことを自粛しても批判したい気持ちは変わらない - 人生夢オチ
 
 えーと、言葉足らずだったかもしれませんし、そもそも書き言葉とは常に足りないか常に伝えすぎるものかもしれませんが、それでも、自分が追いかけ続けている「ネットの書き言葉」について問題意識を共有する機会になるかもしれないので、リンク集のようなものをつくってみます。
 
 一連のブログ記事で私が問題にしたかったのは「書き言葉」の話であって、「書き手の気持ち」の話をしたかったわけではないのでした*1。逆です。いったんネット上に書き込まれた言葉が過剰に解釈されたり、よその言葉と連携して想定外の圧迫を産み出して、本人の意図や気持ちとは異なる振る舞いを呈し始める、そういった書き言葉の機能・書き言葉の一人歩き・書き言葉の誤配こそが気になるのでした。気楽な発言のひとつひとつも、ネットアーキテクチャ上で連結したり繋がったりしたら予期しないことが起こり得る――そういった関心が私のなかでは大きくなる一方です。
 
 言い換えるなら、「エクリチュールを巡るネット特有の問題、ネットアーキテクチャの進化や文脈変化に伴うエクリチュールの位置づけの問題」が関心事なのです。
 
 ブログ記事もまた、「ネットの書き言葉」ですし、私の表現の巧拙や読み手の都合によって意図どおりには伝わらないことがあるのは、はてなブックマークをみてもわかるとおりです。これまでも起こってきたことだし、これからも起こることでしょう。話し言葉の領域でも、伝言ゲームみたいな事は起こります。でも、それらを差し引いても、ネットに書き込まれる言葉のロジスティクス*2の変化や文脈変化、ネットそのものが社会のなかでアングラなのかパブリックなのか……といった変化によって、そのネット上の書き言葉の解釈・流通・効果はもの凄く変化していると思うんですよ、現在進行形で。それは興味深いことでもあり、怖いことでもあります。にも関わらず、ネットに書き込まれる言葉達は驚くほど無神経に扱われている――それが私達の社会と精神に何をもたらすのでしょうね。私、それが気になります。
 
 以下、関連領域で私がネットに書き込んできた文章のめぼしいところをピックアップしてみます。
 
 
 みんなの怨恨が独り歩きする“ネット地縛霊” - シロクマの屑籠
 ・書き手ではなく、書かれた言葉が一人歩きする問題について。今回の記事の出発点に近い。ただし、ここに書かれているような「特定の場に地縛霊が籠もって」という問題意識は、twitterのような広範囲なネットメディアの普及によって、ちょっと古くなってしまった感はある。今でも一部のネットメディアにはたぶん有効。
 
 黒歴史がアーカイブになってしまう時代 - シロクマの屑籠
 ・ネットの黒歴史と、ローカルな黒歴史の違いについて。
 
 “日向”になったインターネット - シロクマの屑籠
 ・ネットの文脈変化について
 
 「何を書かないようにするか」が問われている - シロクマの屑籠
 ・世渡りとしても社会的文脈としても「書かない」大事だよね記事。
 
 ネットの社会化、「死にたい」の社会化 - シロクマの屑籠
 ・ネットの文脈変化に伴う「死にたい」の社会的意味変化について。
 
 Googleが精神疾患を診断・治療する未来 - シロクマの屑籠
 ・アーカイブ化された個人の言葉が測定・評価される未来について。それと筆者の気持ちを必ずしも全部反映したわけでもない書かれた言葉だけがまなざされ、忖度され、評価される未来についての警戒。内心の気持ちなんて知ったことか、観測された身振りと言葉だけが真実だ、というマッチョな世界観についていけるんですか?みたいな。でもネットが今向かっているフォーマルな方向は、思いやりや察しではなく、こっちだと思って私はゲームのチップを賭けてます。
 
 エアリプライの危険性と対策 - シロクマの屑籠
 ・書き言葉の誤配の問題について、エアリプライを参考に。悪口の誤配とも関連。
 
 「話し言葉」がアーカイブ化されて、日常が変わっていく - シロクマの更地
 ・コミュニケーションの書き言葉化と「万人の万人に対するメディア」としてのネット
 
 この問題は、これからネットがどうなるか・これからネットがどのようにコミュニケーションを塗り替えるかを占ううえでも結構重要なはずで、精神科界隈とも遠くて近い縁のある領域だと認識しています。人間の内心の問題、人間の振るまいとメディアの問題でもあります。これからもマークし続けるでしょうし、既にブログの下書きが何本か出来ています。
 

*1:一応、私の関心領域のひとつに「書くこと」「所作すること」の繰り返しによって内心が影響を受ける、そういう戒律みたいな適応技術研究も無くは無いのですが、今回はあまり意識していません

*2:敢えてこの言葉を私は選択してみます

シロクマ(熊代亨)の著書