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シロクマの粘土板

本拠地は「シロクマの屑籠」です。こちらは現時点では別館扱いです。

自分だけの魔法のハサミを手に入れるには――まとまっていないメモ

  
魔法のハサミはどこにもないという話。 - orangestarの日記

 
 「500~3000字程度にまとめられた小手先のテクニックや経験談で、不特定読者の悩みを解決することは可能か」と言われたら、「No」と答えるほかない。読者が手に入れるのは悩みを解決する方法ではなく「悩みを解決する方法を手に入れた気分」のほう。ライフハック記事や自己啓発本の大半は気分を売るための媒体であって、本当に悩みを解決できると思って実践している人はあまりいない。
 
 尋常ならざる経歴・才能の持ち主が書いた自己啓発本の場合は、特にそうだと思われる。そもそも手本とするにはスペックや経歴がデタラメ過ぎる。大作家や大俳優の真似なんて誰が出来るっていうのか?あれらは筆者個人の面白さを垣間見るには適しているが、不特定多数が真似るには向いていない。
 
 それはそうとして、「魔法のハサミ」の話。
 
 私は個人の社会適応を解決する「魔法のハサミ」をずっと追い求めてきた。
 
 「魔法のハサミ」に相当するような、汎用性の高い社会適応の鍵について、最近の私は「ある」と思うようになっている。ただし、その「魔法のハサミ」相当の社会適応の鍵は
 
 ・個人それぞれの遺伝的特性ごとに違っている
 ・家族背景や生活史、時代によっても違っている
 ・身に付いた価値観や規範意識によっても違っている
 ・現在利用可能なリソースによっても違っている
 
 ので、かならずオーダーメードなものにならざるを得ない。そして
 
 ・一定の(割と良い)判断力を伴っていなければ制御が困難になりやすい
 ・個人の社会適応傾向を変更するには時間的・実践的な積み重ねが必要不可欠
 ・大きな変更ほど必要な時間は長く、路線変更は段階的でなければならない
 
 ことを承知していなければならない。
 
 なかには「魔法のハサミ」に相当するものが乏しい人もいるかもしれない。生まれの問題を含んでいる以上、そのような可能性を否定してしまえば嘘になってしまう。特に、自分が生まれ持っている性向を的確に理解し、その長所を最大限に生かし短所を最大限にカヴァーするような処世について(家系的にも個人的にも)知る手段が乏しい場合には、「魔法のハサミ」の把握・使用は難しくなる。
 
 おかしな物言いになるかもしれないけれども、そういった生まれの問題、遺伝的傾向や(エピジェネティクス的な)遺伝子発現の為の生育環境づくりの問題は、『Fate/Zero』『Fate/Staynight』的な表現をするなら「先代から受け継ぎ発展させてきた魔術回路をどうやって適切に取扱い、最大限に生かすのか」というテーマに喩えられるかもしれない。世代間伝達を当然起こる現象とみなし、遺伝的蓄積が後代に与える影響に視野を広げて考えるなら、「魔法のハサミ」の代々の習得可能性や「一族のアドバンテージやディスアドバンテージ」について自覚的かつ伝承的*1であっても良いように思う。素養とは、血と育ちの影響をいかんともしがたいほど受けるものなのだから。
 
 なんとなくなんだけど、こういう「遺伝的傾向の世代間伝達」に自覚的な家庭ってのはあるところにはあるように思う。随分とオンボロな話だけど、やっている家庭はやっているようにみえる。もちろん封建的な家庭でなくても、だ。
 
 話を戻すと、だから自分自身にとって汎用性の高いソリューションを見出したいと思っている人は、自分自身の性質について、家系的・遺伝的な性質も含めてできるだけ知ったうえで、長所の開拓や短所のカヴァーについて考えたほうが良いと思われる。「考える=万能の解決」ではないのは百も承知としても、よく考えること・きちんと吟味することは常に有用だ。尤も、その「よく考える」「きちんと吟味する」ことこそが、ひとつの「魔法のハサミ」なのかもしれないけれども。
 
 判断力は、娑婆の大河を渡っていく自分自身を制御するための(ささやかな)舵だ。舵の無い舟は、ただ川の流れに流されるほかない。舵は万能ではないが、それでも舵の無い舟に比べれば自分の意志を行く末に反映させやすい。
 
 それと、時間の流れに対して長期的な展望を持てるのか否か。言い換えるなら“自分自身を見守る寛大さ”が心理的/経済的にどこまであるか。「魔法のハサミ」を新規作成するにしても、鍛え上げて鋭くするにしても、膨大な時間がかかる。短期間にどうにかなるものではない以上、ライフハックで満足するのとは正反対の、時間を味方につける心構えは必須だ。この心構えもまた一種の「魔法のハサミ」のような気がしなくもないし、物的/心的余裕によって時間感覚は左右されがちなのも事実だけど、とにかくも長期的なトライアルと、トライアンドエラーのフィードバックによる随時修正が可能か否かが重要なのは間違いない。それと心理的/経済的ロジスティクス
 
 ここに書いた事は、書くのは簡単でも実践の難しいものばかりで、アイデアが散らかったままで全く整理されていない。オーダーメードな「魔法のハサミ」を幾つかのモデルケースに仕分けしたり、典型例を示したりするようなこともできていない。あまり間違っていないことをこれから書いていくための下敷きとして、ここに書き散らかしておく。
 

*1:ここでいう伝承的とは、単に昔の猿真似を永遠に繰り返すことではなく、先代までの傾向を踏まえて自分自身や自分の子孫の長所の発現に出来るだけの便宜を図ることを指していると思って頂きたい

シロクマ(熊代亨)の著書