シロクマの粘土板

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『精神医学の古典を読む』グッデン教授によるルートヴィヒ2世、鑑定のくだり

 

精神医学の古典を読む 新装版

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 神経質で自閉的で、夢想に耽り、宴会でも会話を嫌い、別荘の若い家臣に裸踊りをさせ、臣下とも滅多に会わず、ときどき幻聴があるらしく独り笑いをし、聖樹と称するものを植えて礼拝し、興奮してうろうろ歩き回り、ドイツ皇帝の胸像に唾を吐きかけ、罪もない何人もの臣下を重い刑に処し、別荘を爆破せよとの奇妙な命令を出し、バイエルンプロイセンに売ってその金で海外に新しい国をつくる計画を立て、重要文書に目を通さず臣下と扉越しにしか話さず、食卓の行儀が悪く不眠のため睡眠薬を常用しているというような行状から、グッデンは、偏執症(パラノイア)で治る見込みはないと鑑定した。 (同書P81、うたかたのグッデン より)

 グッデン教授はミュンヘン精神医学が大発展していく時期に師匠筋だった人、国立大学の教授だったこともあって精神を病んだ王の鑑定をやることになった。とりあえず上記フレーズは、なんとも味わい深い、なるほど、これは狂王だ、という感じが漂っている。ちなみにここにあるパラノイアは遠い昔の言葉の意味で、21世紀に言われるパラノイアとは指すものが違うのでご注意を。
 

シロクマ(熊代亨)の著書