シロクマの粘土板

本拠地は「シロクマの屑籠」です。こちらは現時点では別館扱いです。

承認欲求ゾンビブロガー発見!ロックオン!

 
 ブログ更新の気力を失ってるのに4回も更新してるバカ - あざなえるなわのごとし
 
 リンク先のid:paradisecircus69さんは、以前から見知っているブロガーさんです。毎日毎日、たくさん記事を書き綴っていて「うわー凄い人だなー」と思う一方で、そのモチベーションというか、エネルギーが信じられませんでした。でも、そんな彼も、ブログを更新するモチベーションが落ちてきているようです。
 

そーいうのもPVあってこそ、というか正直「PVがなきゃ読まれて無い分好きに書けばいいやー」とか思って書いてるんだけども、なんかモチベーションが上がらない。嫌われても悪口もそれなりの成果があってこそなんすよねぇ。
何かしらの成果をよりどころに何かしらのダメージ軽減にあててる。
ところが成果がないのにダメージしかない。
評価なんていいやー、と思わずに書きたいがどうやらそうでもないらしい。

http://azanaerunawano5to4.hatenablog.com/entry/2013/12/06/153911

 なるほど、ブログ記事を読んで貰いたい、不特定多数のアテンションを集めたい、手応えのあるリアクションが欲しい、そんなところでしょうか。そういう欲求に専ら駆動されてブログ記事を毎日書き続けるとは……。承認欲求ゾンビ状態というか、これはヤバそうですね。
 
  

承認欲求ってのは根深い。
クマの先生に分析されそうな段階。

http://azanaerunawano5to4.hatenablog.com/entry/2013/12/06/153911

 
 おおっ、私の説教分析を希望なさっていると?!これって、「おまえの自意識を食べちゃうゾー」って記事を私に書かせて悪名を高めるための釣りですよね?ひさしぶりに、大義名分つきのごちそうだー!!もふもふ!!それでも、ここはひとつ、虚心坦懐にparadisecircus69さんのブロガースタイルについて私見を述べてみます。
 
 
 1.あなたはブログで承認欲求のパチスロをやってませんか?
 
 まず、断っておくと、「私はブロガーは欲望を持つな」とは思いません。自己愛充当だって、承認欲求だって、どんどん欲しがっていいと思うんです。でも自分の身の丈よりも大きな欲を持てば、充たされない苦しみを味わうし、血迷って危ない橋を渡ってしまうかもしれません。ブログを介して心理的欲求を充たす際のコツは、「欲しがって構わない、けれども欲しがりすぎない」ではないでしょうか。心の渇きを実感し、ブログにそれらしい記事を書き殴ってしまうほど飢えてしまったあなたは、欲しがりすぎていると思います。
 
 非礼を承知で申し上げますが、あなたのブログを拝見するに、釣り師としての才能はまだ開花しておらず、技倆は発展途上とお見受けします。PV重視型のブログって、たぶん才能五割・技倆五割だと思うんですが、才能があるか否かはさておいて、技術的な部分がまだできていないと感じます。もし、PVが欲しくてしようがない、そっちが主食のブロガーだというのなら、惰性で記事を書くなんて愚行はやめて、どういうブログがPVを荒稼ぎし、どういうブログがそうでもないのか、よく見比べてみるべきと思います。
 
 毎日たくさん記事を書くのも、考えものです。思うに、ブログの世界では「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」はある程度までは真理でも、ある限界を越えると「かえって読んで貰えなくなる」リスクを高めてしまうと思います。心身のリソースが複数の記事に分散してしまって、集中力が無くなってしまう弊害も起こりますし、アウトプットにばかり時間をかけすぎて、インプットやオフラインの体験が疎かになってしまうのも問題です。書き手も読み手も、どんどんつまらなくなってしまう。
 
 しかも、あなたのブログ記事は、割とどれも「私はPV狙いです」って顔をしているようにみえます。でも、「PV欲しいです」丸出しでブログを書いていると、PVって逃げていくと思うんですよ。はてなダイアリーでPV魔王になった人々を思い出すと、「旦那様、PVを恵んでくださいませ」って顔をしていたブログって無かったような気がします。「モテたいですPV欲しいですアフィリエイト欲しいです」って下心がなんとなく漂っていると、私みたいな自意識ハンターはさておいて、普通の読者は敬遠するんじゃないでしょうか。せっかく素敵な記事を2、3個書いても、ほかの記事がどれもこれも「旦那様、PVを恵んでくださいませ」的フレーバーを帯びていれば、「このブログの巡回は自分でやらなくてもいいかな」って思われても仕方ありません。
 
 
 2.どうしても一日に複数個の記事を書きたいなら
 
 どうしても一日に複数記事を書きたいなら、それはそれで一つのスタイルとして、もっとやりようがある筈です。少なくとも「全弾、PV狙い」よりは良い方法が。
 
 全ての記事をPV狙いにしても、どのみち上手くいかないのは先に述べたとおり。だったら、一部の記事をPV狙いにして、それ以外の記事は他の用途に用いれば良いのです。例えば、
 
 ・記事の1/4は自分の思考を整理するため
 ・記事の1/4は特定の誰かにメッセージを届けるため
 ・記事の1/4は自分の趣味や生活についての備忘録として
 ・記事の1/4をPV狙いとして
 
 これなら、不特定多数に承認欲求を依存する度合いは下がりますし、ブログは単なるアウトプットではなくインプット手段としても有用になります。また、特定の数名程度を対象とした記事は、PVは稼げないとしても、心温まるブログライフには繋がるので、心が荒んできている人には有用だと思います。「俺はちゃんと分散しているよ」とおっしゃるかもしれませんが、少なくとも私がブログを一日複数回更新していた頃*1に比べると、あなたのブログは、悪い意味でPV狙いの占める割合が高いように見えます。そりゃあ心が荒みますよ。これは、才能の問題とか努力の多寡とか、そういう次元の問題ではなく、ブロガーとしてのストラテジーやドクトリン(教義)の問題です。一日にたくさん記事を書くなら、それでも心が折れないようなスタイルを伴っていないと、自意識が幾つあっても保ちません。
 
 なお、一日に複数の記事を書くこと自体は、不特定多数からのPV稼ぎを至上命題とするブログスタイルとして筋が悪い点は断っておきます*2。私はPV至上主義的なブログを目指さなかったので、もしかして勘違いな事を書いているかもしれませんが、大手になるまでは、一日ひとつの記事を、PVをきっちり稼ぐための戦略に則って書いたほうが上手くいくような気がします。まあ、そのためには、自分のキャラクターとかブログスタイルを(ちきりんさんや、体調わる子の毒吐きブログさんのように)きちんと尖らせなければならず、自分自身のキャラクター管理にある程度の締まりが必要になってくるかとは思います。そういうのは、ブログライフとして窮屈にならざるを得ないし、カルマの管理を怠ればキャラ立ち相応の因業が巡ってくるので私は奨めませんが、もし、あなたがPVのためなら悪魔のケツだって舐める覚悟が出来ているなら、自意識丸出しの記事なんて書いてないで、ちゃんとキャラクターの仮面をかぶって、スタイルを尖らせてください。
 
 
 3.「PVが稼げるなら、話題はなんでも構わない」とか思ってませんか
 
 paradisecircus69さんの場合、ブログ記事のジャンル選びも、ちょっとまずいような気がします。みたところ、サブカルチャー領域に得手があるようにお見受けしますが、そちらの方面でブログを尖らせるでもなく、満遍なく話題が散っているようにみえます。「この人は、一体どういう方面で面白い話をしてくれるんだろうか?」――これって、不特定多数からのアテンションをかき集めたいブログとしてはヤバいんじゃないでしょうか。
 
 ブログをやっていると、PVが集まるジャンルがバラけがちです。私のブログの場合も、一番PVを稼いだ記事はしようもないワインの記事ですが、こんな記事に引っ張られていては身が持ちません。私のブログのメインテーマは心理/オタク/社会適応の三本柱で、PVが稼げようが稼げまいが、それらを軽視せずに今日までやってきました*3。たとえPVが稼げなくても、テーマがある程度まとまっていたほうが常連さんに得意分野を覚えて頂きやすいし、「あの話題だったらあのブログだよね」とみなして貰える確率が高くなると思っています。
 
 「過去にPVが稼げたから」って、あっちの話題こっちの話題に浮気していると、読者に覚えて頂く確率がどんどん下がってしまいます。たまには“普段と違う方面の話題”を持ってきてもいいとは思うんですが、やりすぎは危険です。そして自分のブログのテーマをできれば1つか2つぐらいに絞りましょう。PV重視度が低いなら、私みたく3つでもいけるかもしれません。どちらにしても、ある程度テーマを絞らなければ読者さんに覚えてもらえず、自分の“武器”にも磨きをかけにくいので、ブログ大戦略のスタートアップとしては拙いとは思います。
 
 
 4.実は、PV重視型ブログをやるにはまだ早いのでは?
 
 あと、あなたの場合、現時点でPVだの承認欲求だのをがっついても、あんまり良いこと無いんじゃないかと思いました。ブログをスタートした時点でスタイルや芸風や才能が開花している人、どこかで文章修行を終えた人がプロブロガーを始めるなら、滑り出しがスムーズでなければ駄目かもしれませんが、おそらく発展途上であろうあなたが、下手にPVのトルネードを何発も浴びていたら、どうにかなっちゃうかもしれません。もう既にどうにかなっちゃってるのかもしれませんが……。
 
 人生万事、塞翁が馬。ブログなんてその最たるものじゃないでしょうか。
 
 ブログを書いていて得られるものが何なのかは、今すぐには分かりません。何が幸いして、何が災いするかもわかりません。paradisecircus69さんは、ブログで知名度を獲得して、比較的短期間にマネタイズできたら良いなと思っているかもしれません。でも、そんな事、無理だと思うんですよ。もしそれが可能だというなら、現時点で出来ていなければならないでしょう。最近はてなブログでも見かけるようになった「プロブロガーとおぼしきキャラクター達」はそれが出来ていると思います。個人的にはああいうブログスタンスは好きではありませんが、彼らのキャラクタライズの技量と覚悟には敬意を感じます。
 
 しかし、そういう完成済みなブロガーならともかく、まだ出来上がっていないブロガーの場合、自分がブログから何を得るのか(そして何を失うのか)は未知数です。だから、刹那的なPVだけを追いかけても、訓練不十分のまま、不十分にPVを稼いで、競合ブログ達との競争に競り負けやすく、渇望ばかり煽られてしまうのが関の山ではないでしょうか。
 
 まだ才能が開花していない人が、ブログから得るべきものって、PVだけじゃないはず。もちろん不特定多数からのアテンションもある程度は必要かもしれませんが、他に目指すべきもの・楽しんだほうが良いもの、色々あるんじゃないでしょうか。例えば、「未来の自分が読んで満足できる文章としてのブログ」とか。そういうブログスタイルのほうが、ブログについてまわる諸々を受け入れやすく、雨の日も晴れの日もブログを楽しみやすいんじゃないのかな、とは思います。長丁場ですからね、顔もidも知らないような人間の、気まぐれみたいなアテンションに心を委ねていたらおかしくなっちゃいますよ?
 
 
 5.時間を味方につけてください
 
 長くなってしまいましたが、最後に一言。
 
 〆切におわれているプロの書き手や、余命三ヶ月の重病人ならともかく、一般論としては、アマチュアブロガーには時間的猶予がある筈です。極論を言えば、ブログの時代が終わって10年~20年後に開花したって構わないのです。だから、今すぐ人気者にならなければならないわけでもないし、遠回りをする贅沢も許されます。
 
 今すぐアチーブメントを達成しようと力む時、時間は敵に回ってあなたを苦しめます。「早く成功しないと」という焦りが心に充満して、冷静な判断力をも損ねてしまうでしょう。反対に、今すぐアチーブメントを達成しなくても構わないと割り切るなら、最初の一年、二年はPVなんて諦めて、実験のたぐいに費やしたって構わないわけです。
 
 もちろん、「なにもしない」を何年続けたって時間は味方をしちゃあくれません。でも、今すぐの達成ではなく、数年後の自分自身に贈り物を贈ろうとする人には、時間は味方してくれる事が多いと私は思います。ストラテジーを伴った継続は力です。ブログをやめるやめないに関わらず、ストラテジーを伴った継続は必ず何かを与えてくれます。目先の利益に惑わされることなく、ロングスパンで活躍なさることを祈念します。
 

*1:2006~2007年

*2:もちろん、一ヶ月に五十万PV以上とか、そういう次元になってくれば話は別かもしれませんよ?

*3:この記事は、ある面では“忌むべきブログ論”なのですが、それでも心理の領域に被さっていますし、12月7日時点で、ここはシロクマの屑籠ではないので、まあ、大丈夫でしょう

シロクマ(熊代亨)の著書