シロクマの粘土板

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小児性愛障害Pedophilic Disorderの診断的特徴に書かれていること

 

DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル

DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル

 
 
 私の近所のインターネットで「小児性愛」「ペドフィリア」といった言葉を何度か見かけたので、以下に、アメリカ精神医学会のDSM-5における小児性愛障害について、診断基準と診断的特徴を引用・列挙して写経しておきます。
 
 
【診断基準 302.2(F65.4)】

A.少なくとも6か月にわたり、思春期前の子どもまたは複数の子ども(通常13歳以下)との性行為に関する強烈な性的に興奮する空想、性的衝動、または行動が反復する。
B.これらの性的衝動を実行したことがある。またはその性的衝動や空想のために著しい苦痛、または対人関係上の困難を引き起こしている。
C.その人は少なくとも16歳で、基準Aに該当する子どもより少なくとも5歳は年長である。
(注:青年期後期の人が12~13歳の子どもと性的関係をもっている場合は含めないこと。)

 【診断的特徴】
 
 小児性愛障害の診断基準は、このパラフィリアを打ち明ける人と、明らかな客観的証拠にもかかわらず思春期前(一般に13歳またはそれ以下)の子どもへのあらゆる性的誘惑を否定する人との両者に適用することを意図している。このパラフィリアを告白する例としては、子どもへの強度の性的関心を素直に認め、子どもへの性的関心は身体的に成熟した人への性的関心よりも強いか同等であると述べる場合も含む。子どもへの性的誘惑や好みが心理社会的困難を生じていると訴えている人も、小児性愛障害をもつと診断してもよい。しかし、これらの衝動についての罪悪感、恥辱、または不安の意識がないことを告白し、(自己報告でも客観的評価でも、あるいはその両者でも)パラフィリア的衝動によって機能的な制限がないならば、さらに自己申告と法的に記録された履歴により衝動に従って行動したことがないと示されているならば、その人は小児性愛的な性的指向をもってはいるが小児性愛障害ではない。
 子どもへの魅惑を否定する人の例には、異なった機会に複数の子どもに対して性的な接近を行ったことが判明しているが、子どもに関する性的行動についての衝動や空想は否定する人、さらに、判明したエピソードや身体的接触はすべて故意でも性的でもないと主張する人が含まれる。また他の人は、過去の子どもに関する性的行動のエピソードを認めるが、子どもに関する衝動や空想を経験していることを否定するであろうから、主観的に苦痛を感じていることも否定するであろう。このような人は、自ら報告した苦痛がないにもかかわらず、6カ月にわたり行為を繰り返した(基準A)という証拠と、障害の結果として性的衝動に基づいて行動したか対人関係の困難を経験した(基準B)という証拠がある場合には、小児性愛障害と診断してもよい。
 上述したように、被害者が複数存在することは診断の十分条件となるが、必要条件ではない。つまり、強烈なまたは選択的な子どもへの性的関心を認めることによってのみ、その人が基準Aを充たすとしてよい。
 小児性愛の兆候や症状が6カ月以上持続しているという基準Aの一節は、子どもへの性的魅惑が単に一過性のものではないということを保証しようとするものである。しかし、6カ月の持続期間が正確に判断できない場合でも、子どもへの性的魅惑が持続していたという臨床的な証拠があれば、この診断を下してよい。
 
 【診断を指示する関連特徴】
 
 思春期前の子どもを描いたポルノグラフィーを過度に用いることは、小児性愛障害の有用な診断的指標である。これは、人は自分の性的関心に応じた種類のポルノグラフィーを選ぶ傾向があるということの一般的な事例の特別な例である。
 
 ※有病率、症状の発展と経過、そのほかいろいろについては、書籍のP692以降を読んでやってください
 ※こういう、診断的特徴に描いてある細々としたことが、診断基準の一覧だけ眺めていてもピンと来ないことを補ってくれて滋味深いので、DSMの診断的特徴の読み物はすごく良いんじゃないかなぁ、としばしば思います。
 

シロクマ(熊代亨)の著書